19の夏~私の愛した殺人鬼~
「覚えてないけど……」
「そんなハズないだろう? こいつはお前を見たと言ってる」
幸也にそう言われても、思い出せないものは思い出せない。
けれど……。
紗耶香は、ネコの大きな目をマジマジと見つめて……何かを思い出したように、ハッと小さく息を飲んだ。
見たことのある、目だ。
「思い出したか?」
「……昨日、お姉ちゃんの現場で……」
その言葉に、ネコは無言で頷いた。
その瞬間、紗耶香は大きな悲鳴と共に、
「人殺し!」
と叫んだのだ。