19の夏~私の愛した殺人鬼~

「覚えてないけど……」


「そんなハズないだろう? こいつはお前を見たと言ってる」


 幸也にそう言われても、思い出せないものは思い出せない。


 けれど……。


 紗耶香は、ネコの大きな目をマジマジと見つめて……何かを思い出したように、ハッと小さく息を飲んだ。


 見たことのある、目だ。


「思い出したか?」


「……昨日、お姉ちゃんの現場で……」


 その言葉に、ネコは無言で頷いた。


 その瞬間、紗耶香は大きな悲鳴と共に、


「人殺し!」


 と叫んだのだ。

< 104 / 356 >

この作品をシェア

pagetop