19の夏~私の愛した殺人鬼~
重く、人にのしかかって来るような口調に、今まで叫んでいた紗耶香の悲鳴がピタリと止まった。
潤む瞳で、ネコを見ている。
「俺はお前のお姉さんを殺したりしない。安心しろ」
たったそれだけの、なんの根拠もない言葉。
しかし、それは言葉以上の何かを持っていて、まるでネコは無実だと立証されたような感覚に陥る。
将来有望な詐欺師だ。
「……ごめんなさい」
紗耶香はうつむき、小さな声で謝罪した。