19の夏~私の愛した殺人鬼~
 トゥルルル

 トゥルルル

 ツーコール目で、一緒に映画を見ていた母親の飯田由佳子(イイダ ユカコ)が受話器を取る。


『真犯人は……』


「もしもし?」


 主人公が顔をあげ、母親が話をはじめる。


『あいつだ!』


「死んだ!?」


 テレビと現実の音がこちゃ混ぜになった。

 しかし、紗耶香の目は真犯人を映しだしたテレビではなく、由佳子を見ていた。


……死んだ?


 普段使わない言葉が母親から飛び出したことに驚き、唖然とする。


 死んだって、何が?


 思考回路がうまく働かず『誰が?』ではなく『何が?』と思う。


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