19の夏~私の愛した殺人鬼~

「どうした?」


 また振り返り、優しい口調で質問を促す冬我に、沙耶香はちょっと困ったような表情を浮かべた後、

「聞いてもいいですか?」

 と言った。


「あぁ、なんでも聞いてくれ」


「どうして……子供を拾ったんですか?」


 沙耶香の言葉に、冬我より前を歩いていた二人が同時に足を止めた。


 幸也は振り返り、ネコは何事もなかったかのように歩き出す。


 だけど、ネコのまわりの雰囲気が少しだけ変わったきがした。


 冬我はまいったな。というように頭をかき、それから、

「まぁ、話せないことでもないが……」

 と、無言で歩いていくネコの後ろ姿に目をやる。
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