19の夏~私の愛した殺人鬼~

 ショーケースの中に並ぶケーキを凝視する俺に、女の店員はニコニコと愛想のいい笑顔で、

「彼女にですか?」

 なんて聞いてきて……。


 その、ほんの数十分後。



 俺が選んだケーキは床の上でグチャグチャに潰れたよ。


 部屋のカギが開いてたから、入る前におかしいとは思ったんだ。


 そんな俺の目の前に、倒れた奈々子と広がる血だまりが飛び込んできた。


 なにがどうなってんのか、頭が真っ白になっちまって全然わからねぇんだ。


 しばらくの間、その場から動く事もできなかったと思う……。


 気が付けば、ケーキが手から滑り落ちて、跡形もなく消えた……。

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