19の夏~私の愛した殺人鬼~
「ない……」
「ない?」
「ないの。山に入る前に拾った携帯電話が!」
思わず声を荒げて、スカートのポケットをひっくり返して探す。
けれど、ポケットの中は空っぽで、奥に入り込んでい埃がパラパラと地面に落ちただけだった。
「ネコ、どういう事だ?」
冬我がネコを振り返る。
ネコは目を細め、右手でヒゲの生えていないツルツルのアゴを触った。
「……おそらく、お役目終了ってことだろう。
ここから先は自分たちで考えろってことだ」