19の夏~私の愛した殺人鬼~
「待って、ここにお姉ちゃんの魂は見えないの?」
沙耶香が、思い出したようにネコの服を引っ張って言った。
この山へ入る前、あるはずのない携帯電話が落ちていた。
あれは昌代の仕業ではないのか?
「そのことだが……」
ネコは右手の目をギョロギョロと泳がせ、また口を開いた。
「君のお姉さんの姿は見えないが、もう一人、写真で見たことのある顔がある」
「誰?」
沙耶香が聞く。
ネコは大きく息を吸い込んで
「戸部奈々子」
と言った――。