19の夏~私の愛した殺人鬼~
第8章
すべての時間が停止した。
とべ……ななこ?
ついさっき冬我の話で出てきた人物だ。
冬我と同じ施設にいた妹のような存在の女の人。
戸部奈々子。
「どういうこと?」
沙耶香は自体をうまく飲み込めず、眉をひそめた。
「ここにいるのはおっさんの妹だ」
右手の目が一つまばたきをした。
「ネコ、冗談はやめろ。だいたいお前は奈々子を見たことがないはずだ」
冬我がそう言い、ひきつった笑みを見せる。