19の夏~私の愛した殺人鬼~
「『お前みたいな女』が『どうかして』て悪かったわね。
何も知らないくせに!」
そう怒鳴りつけると、怒りの勢いにまかせて大股で歩き出した。
山へ向けてズンズン歩いていく沙耶香の肩を、追いかけてきた栗田が掴んだ。
「なによ!!」
その手を払いのけながら鬼の形相で振り返る。
栗田はその迫力に数歩後ずさりし、それから「ごめん。そんなつもりで言ったんじゃないんだ。
別に沙耶香の事を軽い女だとか、そんなことを思ったわけじゃない」
と、必死で言い訳をはじめた。
それでも、沙耶香の怒りはおさまらない。
今まで一緒にいた栗田だからこそ、言われたくない言葉がある。