19の夏~私の愛した殺人鬼~

「あの人たちは元々友達なのよ。

それで、ほら、ノッポの釣り目がいたじゃない?

幸也君っていうんだけど……、その幸也君の初恋の人を見に行こうってことになって、それであそこにいたのよ!」


 嘘八百を並べたてながら、背中に冷や汗がつたう。


 我ながらへたくそすぎて笑えてしまう。


 けれど、栗田は「ふ~ん」と一言だけ言って、また口を閉じてしまった。


 静かなBGMがヤケに大きく感じる。


 なんていう曲かなんて知らないけれど、栗田の好きなクラシック音楽であることは間違いないようだ。


「沙耶香」


 静かな中、急に名前を呼ばれて一瞬体を硬直させた。
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