19の夏~私の愛した殺人鬼~
けれど、自分の音じゃない。
背中に回された栗田の両手。
ギュッと沙耶香を抱き締めた栗田の呼吸が、すぐ近くで聞こえてくる。
「え……?」
突然のことで理解できず、爽香は身をよじってその手から逃げ出そうとした。
しかし、栗田の手が更に強く抱き締めてくる。
「俺のこと、好き?」
「へ?」
「答えて。俺のこと、好き?」
グルグルと頭の中でその質問の答えが巡る。
だけど、その半分は真っ白で、なかなか言葉にならなかった。