19の夏~私の愛した殺人鬼~

 そんな状態で、ルカは軽く背伸びをし、藤堂の耳元に唇を近づける。


「ねぇ……」


 熱いくらいの吐息が吐きかけられて、先ほどまでの寒気が吹き飛ぶ。


「飯田昌代のこと、どこまで分かってるの?」


「……っ……」


 君に話すことは何もない。


 たったそれだけの言葉が出てこない。


 体中が熱でおかされているような、倦怠感。


「犯人、わかったの?」


 続けて聞かれると、思わず捜査状況を口に出してしまいそうになる。
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