19の夏~私の愛した殺人鬼~

「寒……」


 落ち葉が降る並木で、沙耶香は軽く身震いした。


 今日は、警部志望の幸也との約束がある日だ。


 舞い落ちる葉を見ていると、当の幸也が足早にやってくるのが見えた。


 軽く手を上げる爽香に対し、真剣な表情の幸也。


「どうしたの? 今日は映画――」


「予定変更。三つ目探偵事務所に行こう」


 沙耶香の言葉を遮る幸也。


「へ?」


 目を丸くする沙耶香の手をとって、幸也は車へと歩き出した。
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