19の夏~私の愛した殺人鬼~
☆☆☆
自慢の髪を一つにまとめて、黒いスーツを着た紗耶香が炎天下の中、アスファルト駐車場に立ちつくしていた。
その目の前には会場がある。
イトコの昌代が、今日の主役である。
結婚式でもなく、誕生日パーティーでもなく、葬式の主役である。
紗耶香は広い駐車場から、雲ひとつない空を見上げた。
空は青い、そして大きい。
人間よりも何倍も大きいけれど、限りがある。
青さにも、真っ暗な終わりがくる。
「どうして、お姉ちゃんなの?」
昌代は、25歳という若さで死んでしまった。
しかも、普通の死に方ではない。
何者かによって殺されたのだ。