19の夏~私の愛した殺人鬼~
紗耶香はキュッと唇をかみしめた。
まだ、昌代がいなくなってしまった悲しみも、犯人への怒りも、リアリティがなさすぎた。
頭で理解していても、まるで透明なケースに入れられているように、感情としてそれらが沸き上がってこない。
ただただ、紗耶香の中に疑問だけが浮かび上がる。
どうして?
どうして昌代が殺されたのか。
昌代じゃないといけなかったのか。
それを解決へ導くのはもちろん警察の仕事だ。
けれど、紗耶香は知りたいと願った。
いつの間にか、かみしめた唇から血が滲んでいる事も気付かず、ジッと空を睨み続けた……。