19の夏~私の愛した殺人鬼~
「中心人物がわからないのか」
「あぁ。一応ネット上では『オルフェウス』と名乗ってる」
「オルフェウス?」
「ギリシャ神話に出てくる音楽の神だよ。
自分を『ゴット』と呼ばせないのは世界の神ではなく、あくまでネット上だけの、サークル内だけの神であるからだろうね」
「ある一部の人間にとっては、神であるわけか……」
新田はそう呟き、眉間にシワを寄せた。
「もちろん、そんなのは自分が思っているだけの自己満足だろうけど……。
それが、どうかした?」
「いいや。顔の見えない探偵ゴッコも、ほどほどにしろよ」
そう言い、止めていた箸を再びすすめる。
オルフェウス。
新田はその名前を頭の中で反復させ、刻み込んだ……。