19の夏~私の愛した殺人鬼~
ネコの、こんな隙を付かれたような表情、二度と拝めないかもしれない。
しかし、そんな表情はあっという間に消え、いつもの無表情が戻ってくる。
幸也だって普段から表情が乏しいのだから、人の事は決して言えないけれど、なんだかガッカリしてしまう。
「変なことを言うな」
どう返事をして良いものか迷い、結局ぶっきらぼうな言葉を吐く。
感情表現が下手な黒猫だ。
幸也は無理矢理押し上げていた口角を元に戻し、
「で、昨日のことだけど」
と、真剣な表情に切り替えた。
ネコはパソコンデスクの椅子に座り、足を組んで頷いた。
「昨日は取りあえず現場へ行ってみただけだ」
「なにかあったか?」
「それはまだわからない。
行ってみただけだと言ったろ」