piece
午前中はラクな学科だった。
いつもの6人で食べるお昼休み。
彼氏の話やイベントの話
ああでもないこうでもない
アハハオホホで
散々大笑いしながら食べ終わると
それぞれメイクを直しはじめる。
「午後は実技だよね?」
「そういえばヒロト別れたらしいよ」
「海央のシャドウどこの?」
「ヒロトの彼女ってDクラスのギャル?」
「今日はシャンプーだからラクだねー♪笑」
誰かが何か話はじめれば
誰かが答えてくれる。
海央はふと高校時代を思い出した。
『あの頃のお弁当の時間は
こんなに気が楽じゃなかったな…』
狭い地元の中じゃ
みんなひとりになりたくないのは当たり前で
誰かの話が始まれば合わせて聞いて
他の話は区切りがつけばいいけれど
終わらなければなかなか話せない空気だった。
みんなかまってもらいたいだけ。
話の中心にいたいだけ。
海央はそう感じていた。
もちろんその場の全員がそうだった。
しかし専門に来てからは違った。
今はみんな自由に話すし
だけど真剣な内容の時は真剣に聞いてくれる。
みんなうじうじとしたことに拘らないし
はっきりと言いたいことがいえる。
不思議な居心地の良さだった。