piece
夕方6時以降の駅前は会社帰りのサラリーマンとOL
テンション上がり気味の学生
街の電飾と春の陽気が
都会人をふわふわと高揚させている。
海央がバイトに向かう足取りは軽かった。
B組メンズとのカラオケが楽しくって
ちょっとかっこいいと思ってた篠原くんと
いい感じになれたからではない。
B組メンズは友達にもしたくないチャラさで
篠原くんに至っては友達をけなすいじり方しかせず
B組メンズからもひかれていて
海央に泊まりにくる?と言ってきた。
バイトだからと30分ででてきたが
優奈はノリノリでミリヤを歌っていた。
ミカとのんちゃんは最悪だ~と
帰る海央に毒を吐き3人で笑った。
海央のバイト先は学校のある駅と
アパートのある駅の中間だった。
大学が多く夕方は学生やサラリーマンばかり
駅前に居酒屋も多い。
今日のカラオケを早く忘れるのに
居酒屋でのバイトはちょうどいい。
海央のバイト先は下がバーで階段をあがった2階
外階段には1人の男が座って電話していた。
「もう無理だから!」
海央が階段を登りはじめたときに
男が低い声で怒鳴った。
その低い声がかっこよくて
海央はぞくっとしてしまった。
思わず立ち止まった海央と目があった男は
苦笑いして頭をぺこっと下げ
電話しながら階段を降りて行った。