理想の女性
僕は弁護士の資格を取った時、心に決めた。

彼女にプロポーズしよう、と。

もちろん、新米弁護士がいきなり高給取りにはなれない。

だけど彼女と自分を養うぐらいは、何とかなるだろう。

いざとなれば親を頼るなり、貯金を崩すなりすれば良い。

そう思って、彼女にプロポーズした。

彼女は満面の笑顔で、頷いてくれた。

「約束、守ってくれたのね」

「約束って…」

「わたしを必ず幸せにしてくれるって約束。二年前にしてくれたでしょう?」

「でっでもまだ新米弁護士だし、最初のうちは苦労させちゃうと思う」

「それでも構わないわ。あなたと一緒なら」

彼女は僕の両手を優しく掴み、真っ直ぐに僕の目を見た。

「結婚しましょう?」

「…うんっ!」

その後、彼女の親に会いに行った。

彼女は母子家庭で、母親は日本にいくつもの会社を経営する地位と権力を持っている人だった。

少し気後れしながら挨拶に行った。

母親はとても22歳の娘がいるとは思えないぐらい、若くてイキイキした人だった。

「結婚? 良いわよ。好きにしなさいな」

そして結婚に大賛成だった。

「いっ良いんですか? 僕、まだ社会人になったばかりで…」

「構わないわよ。娘からあなたがどれだけ優秀かは聞いているの。それだけの優秀さなら、すぐに人気弁護士になれるわよ」

「はあ…」

妙にあっさりした態度に、思わず脱力してしまう。

「お金に困ったら、素直に言ってね? こっちは仕事で返してくれれば良いから」

あっ、なるほど。

会社経営はいろいろとある。

いざという時に、僕に弁護してほしいのか。
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