もっと腐ってもいいんじゃない?


 クリタは、席に座ると、パッと後ろを振り返った。



 そして、私を見て、優しく笑いかけてくれた。



 こんな優しさがあったんだなぁ。



 忘れていたのかなぁ。



 それとも、触れた事がなかったかなぁ。


 その正体を、記憶をたどり探した。


 でも、見つからなかった。



 優しさにふれて、堪えていた涙が溢れ出した。


 もう止められない。




 誰にも気付かれないように、ハンカチを顔に当て、喉に声を押し込めて、沢山の涙を流した。





< 9 / 40 >

この作品をシェア

pagetop