【続】幼なじみは俺様王子。
た、楽しみだなんて……
無理無理っ!
こんなところ、入れないよぉおおおお……
10列くらいならんだ列の一番最後があたし達。
最初に入ったカップルの彼女の悲鳴がここまで聞こえてくる。
い、嫌だ……
入りたくない……
順番が来ないでほしいと願っても、すぐにあたし達の入る時がきた。
暗闇の向こうで、あーちゃんと瀬川クンが見える。
どんどん小さくなっていく2人の背中。
「どうぞ……」
待ちくたびれたかのように従業員の人がやる気のない声で言う。
そんな声出されたって、怖くて入れないのよ!
「ほら、行くぞ」
楓があたしの手を引き、2人で暖炉の中へと入る。
「……お楽しみください」
暖炉がゆっくりと閉まる。
「ヒ……ッ!」
思わず楓にしがみつく。
あたし、さっきから何回“ヒ……ッ!”って言ってるんだろう……
「バーカ。扉が閉まっただけだろ」
「だ、だって、真っ暗なんだもん……」
扉が閉まったせいで、楓の顔がよく見えない。
確かなのは、この腕の温もりだけだ。