【続】幼なじみは俺様王子。
パッと手と口が解放されあたしは睨みをきかせて大きく振り返る。
「えっ……」
振り向いた瞬間、その目を丸くした。
と、いうかするしかなかった。
だって、そこにいたのは……
「……水沢、日向クン?」
口を抑えられた時、びっくりしたんだ。
だって、その手首から柑橘系の香水の香りがしたから……
やっぱり水沢日向クンだったんだ……。
「こんなマネしてごめんね。穂香チャン」
さっきの乱暴な態度とは裏腹に、彼は申し訳なさそうに瞼を伏せる。
「どうしたの……?」
なにかワケがあって、あたしをここに連れて来たんでしょ?
問いかけても、水沢日向クンは黙ったまま、なにかを躊躇ってるみたい。
「……会いたいって思ったんだ」
やっと絞り出したような小さな声にあたしは再び、目を丸くした。
……あ、会いたい?
あたしに?
「水沢日向クン……」
「……なんかいいな。会いたい時に会えるって」
意味が分からない。
水沢日向クンはなにを言ってるの……?