【続】幼なじみは俺様王子。




「王子のことも困らせちゃったし」


「えっ?」


……あ。あの時、


保健室で水沢日向クンが楓に向けて言ったあの言葉。

『俺、アンタから穂香ちゃんを奪ってみせるよ?』


あの瞬間が鮮明に蘇ってくる。


不敵な笑みを浮かべる楓の横顔がプレイバックされて、あたしの胸を更に締め付けた。


「あんな卑劣なマネ、するつもりじゃなかったんだ」


言葉の端々に、散りばめられた後悔の文字。


その気持ちがどれだけ辛く、苦しいものかあたしは知っている。


「今からでも、間に合うよ……!」


無意識に口に出た言葉に自分でも驚いた。


水沢日向クンは俯いていた顔をゆっくりと上げる。


「きっと美香サン、水沢日向クンのこと待ってると思う」


「…………」


水沢日向クンはあたしの顔をただただ見つめて黙ったままだ。


「二人が積み重ねてきた思いは、そんな簡単に砕け散るわけないよ……」


あたしが経験したワケじゃないから分からない。


だけど自然と、そう感じた。




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