【続】幼なじみは俺様王子。




……えっ?


あたしはピタリと固まった。


だって……背中に温かい“何か”を感じているから。


あたしを包み込むように後ろから抱き締められているような形になっているのだ。


お腹に回る骨ばった手で雨の中でも消されることのない甘い香りですぐに“主”が分かった。


どうして、ここに……?


目の前にいる水沢日向クンも酷く驚いている様子。


「……お生憎、傘は要らねぇな?」


久しぶりに姿を見たわけでも、声を聞いたわけでもないのに、何故か目頭がジワリと熱くなった。


「……お前、どうしてここに?」


「それを知ってどうする」


冷え切ったあたしのカラダは彼の体温によって徐々に熱を取り戻していた。


耳に吹きかかる息があたしの鼓膜を振動して、なんともくすぐったい気持ちになる。


……どこにいても、何をしてても、いつも彼はこうしてあたしにさりげない優しさをくれから、


あたしの甘い胸の疼きは止まることを知らない。




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