【続】幼なじみは俺様王子。
「ったく。心配させやがって」
「はぁー」とわざとらしいため息をついた彼はあたしを解放すると、自分の傘を無理矢理にあたしに握らせた。
ぐっしょり濡れた柔らかな茶色の髪をうざったそうに掻き上げた楓のブラウンの瞳が水沢日向クンを捉えた。
「……もしかして、盗み聞きしてたの?」
「ああ。この耳でしっかりとな?」
素っ気ない会話を交わした二人の間に沈黙が流れる。
あたしはただ、斜め後ろでその姿を眺めることした出来なかった。
それよりも、楓が迎えに来てくれたことが未だに信じられなくて、頭の中を整理するのに時間がかかっている。
「……でも、安心して。もう穂香に手を出したりはしないから」
水沢日向クンがそう言ったと同時に、「フッ」と楓が笑いを漏らした。
「“穂香”に手を出さない、だと?」
その口調は真剣味を帯びていて、どこか少し挑発的だった。
ゆっくりと歩み寄る楓は水沢日向クンの目の前でピタリと止まった。