【続】幼なじみは俺様王子。
「ちょっと黙って?」
なんて、首を傾げて微笑んだ楓。
途端にあたしはなにも言えなくなる。
やっぱり楓には勝てない……。
楓はあたしをお姫様抱っこしたまま、一番奥にある部屋の扉を器用に開けた。
ここは楓の部屋だ。
楓は、ベッドにあたしを優しく寝かせる。
シーツに染み込んだ楓の甘い香りが、あたしの鼻をくすぐった。
「今日は寝かしてやんねぇ」
そう言った楓は、あたしに体重がかからないように、あたしの耳元で両手をついた。
「あ、明日も学校だよ……?」
本心とは裏腹に、そんなことを言ってしまうあたしはなんて素直じゃないんだろう。
本当は心のどこかで期待しているのに……。
「学校? 関係ねぇよ」
楓は、すでに王子様ではなかった。
そう言って不敵に微笑む楓は、まるで獲物を狙う狼のように見えた。