【続】幼なじみは俺様王子。
「穂香、ありがとう……」
愛チャン静かにそう言って、あたしから体を離した。
「……愛チャン」
愛チャンの心情はわかったけど、あたしにはもうひとつ知りたいことがある。
「もうひとつだけ、聞いてもいい?」
あたしの言葉に、愛チャンはコクンと頷いた。
本当はこんなこと聞きたくない。
真実を知るのが、たまらなく怖い。
だけど、このままじゃいけない……。
あたしはゆっくりと口を開いた。
「あの時のこと、覚えてる?」
ーー「穂香だけが好きで、穂香だけが欲しい」
……桜が舞い散る春の日。
椿姫サンとお別れしたあの日、愛チャンはそう言って涙をこぼした。
あの時の悲しそうな顔は、しっかり目に焼きついている。
……その時に思った。
愛チャンは、今でも楓のことが好きなんだって……。
ずっと、そのことがひっかかっていた。
愛チャンのその言葉が、その涙が、頭から離れなかった。