【続】幼なじみは俺様王子。
「か、楓っ、待って……」
「そんなこと言われたって、待ってやんねえよ?」
楓のシャンプーの甘い香りと挑発的な口調が、あたしを翻弄する。
もう……抵抗する気力もなくなっていた。
「言えよ。この間、言わなかったこと」
「えっ?」
なんのことかわからなくて、首を傾げていると、楓はニヤリと笑って、
「穂香は、今なにが欲しい?」
そんな言葉を囁いた。
その言葉で、あたしは楓が言いたいことを理解した。
この間、「俺が欲しいって言えよ?」って言われて、あたしは言えなかったんだ。
恥ずかしさももちろんあったけど、この日のためにとっておきたかったという思いの方が強い。
あの時は言えなかった、あたしの気持ち……。
今なら、楓に伝えられる。
「あたし……」
バクバクと音をたてる心臓の音が、耳障りなほど聞こえてくる。
勇気を振り絞って、聞こえないくらい小さな声で言った。