【続】幼なじみは俺様王子。
ーーいない。
どこを見渡しても、楓の姿はない。
ここにいたら、女の子達が大騒ぎすることは目に見えている。
もしかしたらそれを避けて、別室にいるのかもしれない。
どうしよう……。このままじゃ……
軽蔑するような目であたし見つめる観客から、思わず目を逸らして俯く。
楓がこの場にいなくちゃ、何の意味もないよ……。
「……川島さん」
すると突然、ステージ袖からあたしを呼ぶ声が聞こえてきた。
それは、さっきあたしにエントリー番号のかかれたバッチを渡してくれた役員の女の子。
あたしは小走りで、女の子のいるステージ袖へ向かった。
「これ、あちらにいる彼女達から預かったんです」
彼女達……?
女の子の視線を追うと、そこには……、
「……あーちゃん、愛チャン」
あたしに優しく微笑むふたりの姿があった。
その瞬間、張りつめていた糸が切れたように涙が溢れてきた。
今すぐふたりの側に行きたい。
そんな衝動を遮るかのように女の子は続ける。
「これを渡してくれと頼まれました」
そう言ってあたしに差し出した、小さなノートの切れ端。
「なに、これ……」
それを受け取ったあたしは、恐る恐る紙を開いた。