【続】幼なじみは俺様王子。
「意地悪すぎるよぉ……」
不意に口から出た言葉をあたしは無意識で呟いた。
「俺が?」
そう尋ねられて、コクンと頷く。
楓は意地悪すぎる。
もっともっとあたしを、楓の虜にさせるんだもん。
「でも、さっき言ったことは本当だよ?」
今度は甘い口調で、あたしを体育館の壁へと追いやる。
頭の隣には楓の両手があたしを挟んで身動きもとれない状態。
こんな状況は初めてじゃないはずなのに、いつになっても慣れないんだ。
あたしの胸にドキドキと甘い鼓動が響く。
ーー「俺にとってのお姫様は……コイツだけ」
飛び上がるほど嬉しかった。
“あたしだけ”
特別な言葉。
あたしを幸せにしてくれる魔法の言葉。
「ねぇ、楓」
楓のタキシードの裾をつまむ。
「ん? どうしたぁ?」
優しく耳を傾ける楓が少しムカついたり……。
だけどーー……
「もう一回、言って?」
あたしの心に光をもたらしてくれた魔法の言葉を。
「やーだ。二度は言わねぇよ」
そうやってイタズラに笑ってあたしをからかう。
「お願い……っ」
しっかり耳に、体に、心に
焼き付けたい。
王子様の“あたしだけ”に向けられた魔法の言葉。