【続】幼なじみは俺様王子。
「……あ、あれは違ぇよ!」
楓が珍しく取り乱してる。
いつもあたしがからかわれてる分、こんな時はついつい意地悪したくなっちゃうんだよね。
「違うの? あの時、約束したのに」
「いや。まぁ、そう、だけど……」
それを言った途端、楓が急に大人しくなった。
やっぱり、覚えててくれたんだ。
あたしは将来、楓のお嫁さんになるって約束した。
ーー『大きくなったら、楓クンのお嫁さんになるのっ!』
ーー『約束だよ?』
そう言って指切りしたのを鮮明に覚えている。
あたしが楓のお嫁さんだなんて、夢みたいでなんか信じられない……。
でも、これは夢なんかじゃないんだよね。
だとしたら、あたしはすごく幸せ者だよ……。
「楓、あのね……」
そんな幸せな気持ちを教えてくれた唯一の王子様だけに、あたしの夢を教えよう。
“好きな人のお嫁さんになる”
それがずっとあたしの夢だった。
そう、彼に言ったらクスッと笑われた。
「その夢、俺が叶えてやるよ」
「えっ……?」
今、なんて………?
楓は体勢を変えて、完全に思考停止したあたしの目の前まで来ると真剣な眼差しであたしを見つめた。
「俺が大切にする。穂香のこと」
「楓……」
そうして、あたしの指に輝る指輪を長くて綺麗な指で優しくなぞった。
「近い未来、本物渡すから」
嬉しくて、嬉しすぎて、胸がいっぱいになって……涙が溢れた。