【続】幼なじみは俺様王子。
蓁宮椿姫サンは、悔しそうに唇を噛み締めながら頷く。
「その方は世界でも有名な財閥の息子様で、結婚も既に決まっております」
「結婚まで……」
「だから……羨ましかった……っ!」
蓁宮椿姫サンは目に涙を浮かべながら、着物の袖をギュッと握り締める。
「楓みたいに優しくて、格好いい方と恋愛出来るアナタが羨ましかった……」
綺麗なハンカチで目尻を拭いて、悲しそうに笑う。
「楓に好きだと伝えても“蓁宮の気持ちには答えられない”の一点張りでした……」
「え……っ?」
「“俺には好きなヤツがいる”と」
楓が、そんなことを……?
蓁宮椿姫サンは、あたしの手を握って優しく微笑む。
「だからお願いです」
「えっ?」
「私は、決められた仕来りに従わなければなりません」
“だから……”と蓁宮椿姫サンは続ける。
「絶対に私の分まで楓と幸せになってくださいね」
蓁宮椿姫サンはあたしに微笑んで深く一礼すると、屋敷の方へと足早に歩き出した。