【続】幼なじみは俺様王子。
振り返ったと同時に、端正な顔が姿を現した。
「溺れなくてよかったな?」
濡れたあたしの髪に、楓の吐息が吹きかかる。
それだけでドキドキして心臓がさっきよりも激しく暴れだす。
「あ、ありがとっ……」
あたしは、この胸のドキドキを気づかれたくなくて、素早く楓の体から離れようとした。
「バーカ」
離れようと胸板を押した手を掴まれて、あたしはまた楓の方に引き寄せられた。
さっきよりも密着する体。
楓の体温が直に伝わってきて、ドキドキし過ぎてこのまま死んでしまうんじゃないかと思う。
「このまま離すわけねぇだろ?」
あたしの耳元で、そう囁くと不敵な笑みを浮かべた。
「……なっ…あ…っ!」
ーーボチャンッ
抵抗の言葉も水の中に吸い込まれた。
楓はあたしの手を強引に引いて水の中に飛び込んだ。
わ、わわわわあっ……!
ブクブクと音をたてて、水深120センチの底に達した時、楓の顔が目の前に現れた。