【続】幼なじみは俺様王子。
「……あたし、ちょっとトイレ行きたくなっちゃった! 穂香、ここで待ってて」
あーちゃんはそう言うと「これお願い」とあたしに荷物を預けて、トイレに入っていった。
2人分の荷物を持ったまま壁に寄りかかって、あーちゃんを待つ。
「……穂香ちゃん?」
柑橘系の香りとともに、あたしの名前を呼ぶ声が聞こえた。
あたしは声のした方に視線を向ける。
「水沢日向クン……」
そこにいたのは、ジーパンにTシャツで、ラフな格好をした水沢日向クンだった。
しばらく続く沈黙。
あたしはそれに耐えきれず、顔を歪めた。
な、なんか物凄く気まずいんですけど……。
「……穂香ちゃん、こんなところでなにしてんの?」
沈黙を破ったのは水沢日向クンだった。
「……えっ、あ、あたしは友達を待ってるの……」
拍子抜けした声で、あたしはそう答える。
「そうなんだ」と水沢日向クンは笑って、また口を閉じた。