【続】幼なじみは俺様王子。




「……あたし、ちょっとトイレ行きたくなっちゃった! 穂香、ここで待ってて」


あーちゃんはそう言うと「これお願い」とあたしに荷物を預けて、トイレに入っていった。



2人分の荷物を持ったまま壁に寄りかかって、あーちゃんを待つ。


「……穂香ちゃん?」


柑橘系の香りとともに、あたしの名前を呼ぶ声が聞こえた。

あたしは声のした方に視線を向ける。



「水沢日向クン……」


そこにいたのは、ジーパンにTシャツで、ラフな格好をした水沢日向クンだった。


しばらく続く沈黙。

あたしはそれに耐えきれず、顔を歪めた。


な、なんか物凄く気まずいんですけど……。



「……穂香ちゃん、こんなところでなにしてんの?」


沈黙を破ったのは水沢日向クンだった。


「……えっ、あ、あたしは友達を待ってるの……」


拍子抜けした声で、あたしはそう答える。



「そうなんだ」と水沢日向クンは笑って、また口を閉じた。




< 90 / 324 >

この作品をシェア

pagetop