【続】幼なじみは俺様王子。
「ねぇ」
その声とともに、柑橘系の香水の香りがふわぁっと広がる。
「えっ? きゃあ……」
水沢日向クンはあたしを閉じ込めるように壁に手をついて、あたしを阻止した。
な、なななな、なに!?
頭の中はパニック状態で上手く回転させることが出来ない。
「や、やめて……っ!」
精一杯出した声も、流れるBGMでかき消されてしまう。
「穂香ちゃん……」
水沢日向はだんだんと近づいてくる。
抵抗して固い胸板を叩いても、やっぱり男の子の力には勝てず動く素振りも見せない。
水沢日向クンの前髪が、あたしの額に触れた。
あたしは思わず、目を伏せる。
「俺と浮気しちゃおっか?」
「えっ……?」
なに言ってるの……?
あたしが伏せた目を上げると、すぐ近くに水沢日向クンの顔があった。
ドクドクッと心臓が激しく脈打つ音が聞こえる。