【続】幼なじみは俺様王子。
行く宛ても分からず、ただ爽に腕を引かれてついて行く。
後ろから見つめるその背中は、ずっと前に屋上で助けてもらった時のように頼もしいものだった。
「そ、爽……?」
控えめに声をかけると、足早に歩いていた足がピタリと止まった。
「……なにもされなかったか?」
爽は振り返ることなく、素っ気ない口調でそう尋ねた。
「うん……」
あたしが気弱な声でそう言うと、爽は振り返ってあたしの頭をくしゃくしゃと撫でた。
「なにもされなかったなら、よかった……」
爽は黒髪を揺らして優しく微笑んだ。
その笑顔に胸がキュッと締めつけられる。
あたし、あんなに爽を傷つけたのに、爽は全然変わってない……。
温かくて、優しい……。
「ねぇ、どこに行くの?」
あたしがそう尋ねると爽は「ん?」と言って、眉をピクリと上げた。
「本当は、楓のとこに連れて行ってやろうと思ってたんだけど……予定変更」
「へっ? ……ちょっ、ちょっと!」
爽はニヤリと笑って、あたしの腕を引き、走り出した。