春夏秋冬
有り難い事なのだが、今の桜はそんな風に思う事が出来なかった。
出来れば一人にしてほしい。そうすれば早く忘れる事が出来るのに。
「ありがとうございました。お疲れ様です」
去って行く車を見送り、自分の部屋へ帰る。
「!」
と、玄関のドアノブに小さな紙袋がかかっていた。
誰かが間違えて置いて行ったのかと思ったが、とりあえず中を見てみる事にする。
そして、頬を自然と涙が伝う。
忘れる事なんて出来ない。


『誕生日おめでとうございます。あなたの幸せを願います』


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