ロールプレーイング17
その時妹が急に立ち止ったんだ、一匹の雑種犬の犬舎の前で、、、。

その犬は逢ったそばから僕たちに媚びることなく、こちらを静かに見つめていた、やさしさと、悲しさを称えた瞳で。そして妹が手を差し伸べた、犬は静かにそっと、鼻先を妹の手の上に乗せたんだ。
僕はその瞬間その犬を家に連れて帰ることになるってことを直感した。その直感は現実になり、僕らは犬を引き取った。犬は雄だったけど、妹はメリーという名前をつけた。もともと五歳は過ぎていたみたいだったけど、メリーはそれから六年生きた、最後は癌にやられちまったんだけど医者にも長く生きたと言われたらしい、、、。
なんで僕は突然こんなことを急に思い出したんだろう、、、。
そして僕は気が付いた、僚介のこの目のせいだって。僚介の目はあの時の、メリーの目に似ていたんだ、、、絶望を知っているようで、だけど希望に満ち溢れていて、おまけに気立てがよさそうで、、、、、、

「なぁ、名前教えてくれないか?ついおまえって言いそうになっちまうから、、、。」
僚介の言葉が、突然僕を我へと引き戻した。さっきまでの怒りは、もうどこかに消えていた。

「  はじめ、、、。」

僕は小さくため息をつき、自分の名前を吐き出した。

「ハジメかぁ、よろしくなっ。」

僚介はさらりとそう言った。そしてすぐにこう付け加えた。
「さっきはマジで悪かったな。ハジメはもろ初対面って感じだったかも知れないけど、俺さっきも言ったと思うけど、上から何度もハジメのこと見てたから、、つい親近感みたいのわいちゃって、、。」
 僚介はそう言って頭をかいた。
「ハジメってどんな字書くんだ?始まるとかの始?」
 僕は自分の名前が嫌いだった、だから漢字なんてどうでもいいじゃんか、そう思ったけど、、、。
僕はゆっくりと空気中に一本の横線を引いた。
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