ロールプレーイング17
日ごろ僕がひいきにしてる隠れ家は、駅の反対口にあるマンガ喫茶インターネットカフェ、ネットもやり放題、マンガも小説も見放題、おまけにドリンク飲み放題!完全個室でプラバシー保護も完璧だったし僕にとってこれ以上の場所はない。最高だと思うだろ?
お金が掛かるって?そんなこと僕には関係ない問題、小遣いは月に五万は貰ってるし、無くなりゃあその都度、プラスして貰えるし、好きな時に食べたい物を食べたり、ほしい物を買ったり、金に困るなんてこと、僕にとっては問題外の話。
 だけどそんな僕だって、たまには外に出たくなる時がある。天気のいい日、パソコンやゲームのやりすぎで目が疲れた時、気分転換に外に出たいと思うこともある。特に今は季節も良いしね、五月が最高にいい季節だってことぐらい、超インドア派の僕だって知っているもの。そんな時は決まって団地の裏の公園のベンチに座ることにしている。果たして〝公園〟といえるほどの場所かはさて置き、僕はここを〝緑のオアシス″と呼んでいる。ここは穴場だ、この場所に来る人間なんて僕以外に存在しないのだから。
 団地の表側には二年前新しくデカイ公園ができた、その公園には、遊具やアスレチック森林浴ができるくらいの林と、ウォーキングコース、おまけにマイナスイオンをたっぷり飛び散らす噴水まで設置されていて、この団地のガキ共も、その母親連中も、学校帰の学生も、運動不足の老人たちも、誰もがその公園に入り浸る。おかげでこの緑のオアシスを僕一人の物にできるってわけ。

 この〝緑のオアシス〟は二つのベンチが並んで置いてあり、その間にゴミ箱と灰皿が設置されてる、そしてその正面にガキ用の小さい滑り台が一台おいてあるだけで、植え込みだって全く手入れされてなかった。公園と呼ぶには、あまりにショボイ物だったけど、だけど僕はこの場所を最高に気に入っていた。
 五月の柔らかい日差しが、僕の体を温めて、ひんやりとした空気が僕の肩をかすめ去る、その風が団地の間を潜り抜ける時、水道管を流れる水の中にいる感覚になる、そのベストポジションを陣取って読書を楽しむ、、、けっこう贅沢な気分に浸ることができる。この町の住人は本当にどうかしている、だってそのことを知っている人間ももちろん僕一人しかいないのだから。
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