ロールプレーイング17
 今日でこの読みかけの長編小説も読み収めだな。僕は読み終えたばかりの小説を閉じた。僕は長編の小説を読むのが好きだ、読み終わるまでの長い時間、擬似的感覚に浸ることができるから、まぁこの小説は長い話のわりに落ちも無い、くだらない恋愛小説だったけど、こんなの僕にだって書けそうだ。ひとつ言っておくけど僕はジャンルを問わず本を愛する人間なんだ、ちょっとカッコいいこと言っちゃたけど、僕だって時にはこんな恋愛小説だって読むってことだ。
 僕は読み終えたばかりの小説をベンチの上にそっと置き、肩の凝りをほぐそうとした。肩に手を当て背中を伸ばす、音をたてて骨が鳴る。今日の自由も最高だ。
 その時だった、僕の自由を土足で踏みにじるような言葉が聞こえてきたのは、、、。

「お前、登校拒否してんだろー?」

 僕は周りを見渡した、僕の周りには人など誰もいなかった、僕は安心してストレッチのつつきを開始した。
「ここだよ、上、上見ろよ。」
僕は声の言う通りに自分の頭上を仰ぎ見た。
すると三階の一室の窓に、僕と年齢は差ほど変わらなであろう少年が、手すりの無い窓枠に腰掛けタバコを吸っていた。片足を窓の外に投げ出しブラブラともてあますような状態で、僕は高いところを好まない、むしろ嫌いの方に属する、高所恐怖症ってやつかもしれない。少年のその姿を見て、僕は背筋がゾクッとした。もしもバランスを崩して落ちでもしたら、即死は免れない、、。たかが三階だからといって侮ってはいけない。僕は彼の真下にある一メートル幅の通路を見渡した。その瞬間昔見たデスファイルの飛び降り自殺の死体の映像が脳裏をかすめた。コンクリートに叩き付けられ、頭はカチ割れてあたり一面に脳みそが飛び散る、この至近距離でそれをやられたら、僕は間違いなく脳みそのシャワーを浴びることになる、それだけは勘弁だ。あいつに降りろと言ってやろう。僕はそう思い、さっきの窓をもう一度見上げた。
しかし少年は、もう姿を消していた。なんだよあいつ余計な心配させやがって、しかも登校拒否だって?ふざけたこと言いやがって、僕は自らの意思で登校しないだけ、拒否しているわけではない。
< 6 / 110 >

この作品をシェア

pagetop