ちよこれいと
──────
────
「ん。美味いな、コレ。
…………夏海も喰うか?」
学校の帰り道、夕陽に染まった坂道を
チャリで二人乗りしながら帰る影が一つ。
「人に貰ったものを
人にあげちゃダメでーす」
まだチョコシューを
もごもご食べてる奏悟を睨む。
……いつまで食べてんのさ。
「なんだよー。いつも
俺がダチから貰ったガム食うくせにー」
バレンタインのチョコは
────別だろ、バカ。
というか、
自分で作ったもの
自分で食べても意味ないし。
「バレンタインのチョコわぁー
女の子の気持ちが詰まってるんすよー」
いままで影を見ていたあたしは、
その言葉を言ったときだけ、
チャリを運転する奏悟の後ろ姿を見た。
「じゃあさ、」
肩越しに目が合って、
息が詰まる感覚を覚えた。
「ッ!」
ねぇ、奏悟。
あのチョコ、ホントはさ。
「このチョコシューには」
────アンタにあげるつもりだったの。
ずっと好きでしたっ……なんて
真っ正面から堂々と、
告白してやるつもりだったのに。
まぁ、あたしのだと
気づいて貰えなくても
チョコあげられたからいっか。