ストリート
私の太ももにすり寄ってきた猫は、そこで足を止める。
この猫も、ここでは何もしない。ただじっと座って居るだけ。
たまに喉を鳴らし甘えてくるが、基本的に私の側で座って居るだけ。
私もただ猫を撫でて居るだけ。
私が裏庭に初めて来た時、この猫は警戒心丸出しで威嚇ばかりしていた。
それでも私はここが気に入り、昼休みはここに必ず訪れた。
そうしているうちにある日この猫は私の近くにすり寄って来た。
だから私は猫に手を差し出し、頭を撫でようとした瞬間
『…。』
噛まれた。
指からはうっすらと血が出てきていて。
ふと猫を見ると私の指を噛んだのは自分なのに、怯えきった顔をしていた。