森奥の水郷


「仕事は大丈夫。ちゃんと上司には許可取ったし、親には書き置き残してきたし。」


「せめて親にはちゃんと言ってから出てきなさいよ。
アンタが揺蕩う(たゆたう)のは何時もの事とは言え、心配するのよ?」


難しい言葉が出てきた…
でも、響き的に『漂う』って意味かな?


「こんな放浪娘、どーせ心配なんてしてないよ。きっと。」


あまり深くは考えずにヒラヒラと手を振って返事を返すと、気に入らないのか思いっきり眉をしかめられた。


「……親って言うのは、いつまでも居るものじゃないのよ?
今のうちに、何か一つでも恩返ししておきなさい。この不良娘。」


「……何故だろう、親友が母親のように思えるのは…」


チクチク痛い所をつついてくるのはまさにソレだ。でも、考えた事も無かった。

親は居て当然で、居なくなると言われても想像つかないし、考えてもみなかったから。


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