森奥の水郷

きっちり溢した分を拭いて、ついでに床掃除もさせられ――いやいや、やらさせて頂き、ようやく一段落ついた。

え、なぜ言い直したのかって?

フッ……女王様が怖いからさ…







「うー…久々に手で雑巾がけなんてしたよ…」


痺れが残る手を揉みほぐしながら、思い返すのは小学校の時の掃除風景。

――柄の短いホウキで、床板に添って一列ずつ掃いていく後ろを雑巾部隊が並んで拭いていったっけ。

モップなんて無かったから、教室の床一面腰を上げて腕に力を込めて拭いたけど、必ず誰かが半分くらいで手を止めてサボるんだよなぁ…――


そんな事を思い出している間に、彼女の言った
「親孝行とは、孫の顔を見せること」
と言う考えがどう言うことなのか、ぼんやりと理解できた気がした。

あくまでも、気がした、だけだけど…。


「あのさ…聞いてもいい?」


「ん、何?」


「何で親孝行が、孫の顔を見せるって事に繋がるの?」


確証を得たくて聞いてみると、少し驚いたような…意外だとでも言いたげな表情をしていた。


…追求しないと思ってたのかっ。


でもそれは直ぐに穏やかな表情に変わって、その理由を話してくれた。


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