森奥の水郷
「ただ孫の顔を見せればいいってものじゃ無いわ。
ちゃんとした夫を迎えて、互いを想い合ったそのカタチが子供なの。」
「うん、よく子供の事を『愛の結晶』とかって言うもんね。」
ふむふむ、と頷きながら聞き入ると、彼女も頷き返してくれた。
「子供が出来たと言うこと…それは、自分自身が『大人』になった証しでもあるわ?
両親からしてみれば、私達はいつまで経っても子供。
だけど、その子供が、子を宿したら…もう『子供』なんて呼べない。
まだまだ未熟者だけど、そうしてやっと本当の『大人』になるのよ。」
むむ…少し難しくなってきたぞ。
「えーっと、つまり?」
「つまり、子供の顔を見せて、私達の成長した姿を親に見て貰うって事が親孝行って事。」
そう簡潔にまとめられて、ようやく理解した私。
ぼんやりとしか解っていなかったものを、彼女は明確に言葉にしてくれた。
そう思える彼女は、きっともう『大人』に近づいてるんだろう。
なんだか、少し…
羨ましいな。