森奥の水郷

外に出るとトントン、と靴の爪先で地面を叩く音がする。
勿論これは自分が立てた音。
開けた時と同じように、カシャン…と音を立てて玄関の鍵を掛けた。


見上げた空は店を出た時よりも明るく、セミの鳴き声も既にしていた。


(五月蝿い…暑い…)


せめて帽子を持ってくれば良かった、なんて呟きは後の祭り。残念ながら諦めて、早々に駅へと歩を進めていく。


一路、【桃源郷】を目指して。

< 7 / 29 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop