ボクは誰?
「ボクちゃん。」


早紀がボクに声をかけた。

早紀は中学から一緒だったし、

以前はずっとボクを、

『有希』って呼んでくれてたのに。


「早紀。何で以前みたいに『有希』って呼ばないんだ?」


「だって、皆と同じじゃないと…。」


そう言葉を濁した。

濁した理由(わけ)はわかってる。

自分もからかわれる、

対象にされたくないだけ。


「じゃあ、ボクは以前みたいに『早紀』って呼ばない方がいいな。」


「…。」


何も言わないで、

早紀はボクの目の前から去った。

ボクは、

ますます読書に、

没頭するようになった。

以前なら、

言葉遣いは、

そこそこ気をつけていたけれど、

からかわれるのが嫌で、

どんどん男言葉になっていく。

もちろん、

言葉遣いに口うるさい、

お母さんの前では、

そんな言葉遣いは、

しないようにしている。



史佳。

幸せ?

笑ってる?


ボクの心の中は、



土砂降りだよ。



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