ボクは誰?
「有希、すごい…。すごくきれい…。私、こんなにきれいなところ、生まれて初めて見たよ。」


いつもよりも、

目を輝かせて、

じーっと景色を見つめる史佳。



『きれい』と感じるものが、

好きな人と同じって、

嬉しいな。

感性や価値観って、

人それぞれだし、

全く同じ人って、

なかなかいないと、

ボクはいつも思っていたんだ。

だから、

史佳がボクと、

同じなのが一番嬉しかった。


「誰にも教えてないんだ。でも、史佳にだけは教えたくて。」


「有希、私、一緒に有希の田舎に来てよかった!ありがとっ!」


罪だよ。史佳。

そんな満面の笑顔で言われたら、

抱きしめたくなるじゃん。



でも、

それはできない。


ボクは、

一生懸命気持ちを抑えながら、

史佳と一緒に、

座ったまま、

海を眺めていた。



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