好きを私にください。
病院に行くと、例のおばあさんがいた。


「こんにちわ。」


そう声をかけると


「あぁ、こんにちわぁ。久しぶりだねぇ。」


痩せた…か?痩せたっつーか…やつれた?


「彼女はどうだい。」

「まだ目を覚まさなくて…。」

「そうかい…。」


フッと小さく微笑むと、おばあさんは遠くを見つめた。


「旦那さんはどうですか?」


俺を見たおばあさんの目は暗く沈んでいた。


俺はそれを見た瞬間しまったと思った。


「この間悪化してねぇ…今日明日が山場だってさ。」


…おばあさん。


「無理、しないでください。」

「ありがとう。」

「俺も顔出します。」

「…いいよぉ、そんな…。」

「俺、おばあさんの言葉、すごい支えになってるんです。」


だから


「今度は俺が支えたいんです。」


恋愛じゃない。


恩を返すんじゃない。




家族…みたいな感じだ。



「…ありがとう。503号室だから…いつでもおいで。」

「はい。」


俺はそう言ってその場を後にした。
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